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03話 呪われた女王 

Author: グラマス
last update publish date: 2026-04-04 16:05:54

 ブレイドのお陰で、短時間で森から脱出する事が出来た。

 大自然の草原の先にはローゼリア王国が見えたが、10メートルはありそうな石壁によって中までは見えなかった。

 新人冒険者パーティなのか、草原に徘徊するスライム、ゴブリン、ウルフと言ったモンスターを、鎧を纏った前衛、魔導服を着た後衛が苦戦しながらも討伐している。

 彼等はブレードドラゴンが引っ張っている事に、目をギョッとして驚かせてしまったみたいだ。

「もしかしてだけど、モンスターだと思って警戒されないかな?」

『冒険者パーティの中には《テイマー》系がいますので、《テイム》したモンスターに荷馬車を走らせていると思っているのでしょう。それがドラゴンだと珍しいので驚いてるのでしょう』

 それなら良かった。

 大きい門の前の行列に向かうと、他から来た冒険者・商人が女性騎士の門番によって荷物チェックを受けている最中だった。

「クロエ様、私達は門番の近くに止めても大丈夫ですよ。この国の貴族や王女は素通りできますので」

「分かった」

 言われた通りに少しズレて止めると、他の冒険者達から注目を浴びてしまった。

「おい、これAランクのブレードドラゴンだろ?」

「あんな可愛い子がテイムしたってのか?」

「でもあんな個体は見た事ねえな。漆黒の体毛に光った体……亜種か?」

「王女も可愛いが、あの子も可愛いな!」

 わざわざアンデッドだと言うと面倒事になるし、亜種だと勘違いさせた方が絡まれずに済む。

 冒険者の女の子達はセレナに向かって手を振っているが、この国では貴族と庶民はフランクな関係なのだろうか。

 セレナとエクレールの姿を見た門番2人が、

「セレナ王女、エクレール様。御帰還お疲れ様です……その姿はまさか賊からの逃走してきたのですか?」

「そうならば、直ちに応援部隊を……」

 ショートカットの女性騎士の言葉を、セレナが遮って応える。

「襲って来た賊は全て、私達の命の恩人が助けてくれたから大丈夫よ」

「了解です。所で……そのお姿は?」

 今度はロングヘアーの女性騎士がエクレールを見て、いつもと違う事に疑問を持ったのは当然だよな。

 素直に話した所でアンデッド扱いは明白、話が広まれば最悪……俺は異端者として追放なんて事もあり得る。

『詳しい事は言えない。だが、致命傷を避けられなかった私はこのお方と使い魔契約・・・・・をした事で、この様な姿になったがいつもの私と変わらない。そのまま仕事を続けてくれ』

「「了解です。エクレール様を助けて頂き、ありがとうございました」」

「は……はい。どういたしまして」

 こんな誤魔化し方するとは予想外だったが、これが最善策だ。

 《ネクロマンサー》と思われたら、忌み嫌われるかもしれない。

「早く行きましょう、クロエ様!」

 これ以上面倒事にならない様にセレナが俺の腕を組んで、門の中を一緒に潜った。

 ローゼリア王国に入ると、ファンタジーゲーム・ドラマで見た事がある中世風時代の風景に感動を覚えた。

 高校レベルの歴史の授業で、中世ヨーロッパは糞尿で衛生面的に汚いと習ったが異世界では魔法があるから、こんなのも聖属性で綺麗に浄化してくれてるから清潔そうに見える。

 街中には人間種族、耳が長く美男美女が特徴的なエルフ種族、獣耳・尻尾と動物的特徴のある獣人種族、それら3種族が歪み合う事なく生活しているのは多様性という奴だな。

「街を案内したいのですが、まずは王城にいるお母様を安心させないといけないわ」

「全然大丈夫だよ! 俺は急いでないから、国を見れるのはいつでも出来るからね!」

 都会に出た田舎者感が出ていたかも、王女に気を遣ってもらうとは男として恥ずかしいな。

 ♢♢♢

 天井には宗教的絵画が描かれており、窓ガラスには女神と思われるステンドグラスがあった。

 ローゼリア城に着くなり、俺達は女王がいると言われる『謁見の間』と呼ばれる場所に向かう事になった。

 扉が開かれると、入り口から玉座までレッドカーペットが敷かれていて、その両端には護衛の女性騎士達が左右に並んでいた。

「ただいま戻りました、お母様」

 玉座に座っているから、このお母様が女王なのだろうが、明らかに病気だが……こんな所にいて大丈夫なのか!?

 白髪で抜け毛が多く、頭皮まで見えてる。

 虚な目、顔は黒ずみ、右頬は壊死して穴が開いて、歯が見えている。

 体は病人のように痩せこけていた。

「何があったのセレナ? 話を聞かせて」

 女王の声は、枯れ葉が擦れるような、死の匂いがする。

 俺は不快な思いをさせないように、片膝を付いて頭を下げる。

「お母様の呪いに効くと言われた『万能薬』……やはりデマでした」

 セレナの話を要約すると、『万能草』と呼ばれる状態異常を完治する秘薬が商業都市に流れている情報を手に入れた。

 そして、その帰りの道中に盗賊とアサシンに捕まった流れらしい。

 俺はずっと片膝を付いて、親子の会話を黙って聞いていると話を振られた。

「そこの貴女、立っていいわ。今の私から腐敗臭しかしなくて、ごめんなさいね」

「お気になさらず。女王陛下……」

 ゆっくり立ち上がると、頭の先から足までじっくり・ゆっくり値踏みされている気分だった。

「それを貴女……クロエが助けてくれたと?」

「はい、女王様」

「娘を助けてくれて感謝するわ。自己紹介がまだだったわね。私はローゼリア王国女王。ヴィクトリア・ローゼリア。今の私は弱ってて……立ち上がるのもやっとで、ごめんなさいね」

 現代の男子高校生に、この世界の礼儀作法は知らないし、敬語なんて合ってるかもわからないが、魔法で何とか出来るなら進行を止めたかった。

「ヴィクトリア女王。呪いと言いますと……」

「過去に魔王軍幹部との戦闘で、体が徐々に腐敗する呪いを受けた。神聖教会に頼んだけど、呪いは強力で解くのは困難を極めたわ。高いお布施も無意味に終わったわ……ゴホッゴホッ」

 ヴィクトリア女王は長すぎた会話に耐えきれず、咳き込みから吐血してしまった。

「これ以上喋ると危険です」

「教会の聖母様でさえ無理でした。進行を遅らせる程度しか出来なかったのです」

「ベッドで休みましょう」 

 介護してる隣にいたシスター達が、《ヒール》を発動してヴィクトリア女王の苦しみを和らげてあげた。

 呪いが蓄積されて取り除く事すら出来ないとは、魔法は便利な物と思っていたけど、使い方によっては人を不幸にするのか。

 シスターが風魔法でヴィクトリア女王の体を浮遊で担架に乗せた時、セレナの手を握って伝えたる。

「時期に私は近いうちに死ぬわ。呪われた私の肉体を『オーバーロード・リッチ』が奪いに来る。それを防がないと……」

 その言葉を聞いて、ヴィクトリア女王は少しだけ笑顔を見せた後、ゆっくり目を閉じた。

 シスターが優しく彼女の手と手を合わせたら、その場を離れた。

 どの世界でも病人を見ると、心が痛々しく感じてしまう。

 玉座に座っていたのも、弱った姿を娘を見せたくないという親心。

 そしてそんな事は気にしないからベッドで休ませたいという子心。

「予定ではお姉様は今晩に帰って来る予定よ。それまで待ってましょう! そしていつまでも汚れたまんまだから、お風呂で汚れを一緒に落としましょう?」

「そうだね……て一緒に!?」

 俺はセレナに腕を組まれて、浴場へ向かう事になった。

 ♢♢♢

 『Sランクダンジョンーー《墓場》』

 その空間内はダンジョンボスが作り上げた世界観となり、外とはゲートで隔離されたダンジョンとなっている。

 その世界で徘徊するのは、生前がA〜Sランク認定されていたモンスターをアンデッドにして更なる強化を施したモノばかりだ。

 皮肉にもダンジョン攻略をしようと侵入した冒険者達を屠り、墓石には彼等の名前が刻まれている。

 壁も屋根もない玉座に座るのはオーバーロード・リッチ。

 全身骨だらけの姿、漆黒の衣服を羽織り、明るい月夜が墓場の世界を照らす。

「あの女の死期も近い……あの肉体が我が物になるまで、実に10年も掛かった! だがもう直ぐで手に入るぞ。クカカカッ!」

 オーバーロード・リッチがカカッと笑みを浮かべると、骨の体は所々から亀裂が入る。

「そろそろ、この体も朽ち始めたか……」

 チラッと名前のない墓石をチラッと見つめると、一言呟いた。

「……そうだ。次の墓石には、あの目障りな第一王女、第二王女の名とどちらかの名も刻んでやろうか」

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